ヘンリー・ミンツバーグ氏(Prof. Dr. Henry Mintzberg、カナダ出身のビジネスと経営に関する学者。カナダのケベック州モントリオールにあるマギル大学デソーテル経営学部のクレグホーン経営学教授)は、「マネジメントとはサイエンス、アート、クラフトのバランスを取る行為である。効果的なマネジメントには3つすべてが必要であり、いずれか1つに重点を置きすぎると機能不全に陥る」と語っています。
マネジメントにおけるアート(Art、創造性と直感)は、創造的なアプローチや直感的な判断を意味し、問題解決や革新的なアイデアの着想に大きな役割を果たします。クラフト(Craft、経験と実践)は、熟練した技術と実践的な知識であり、実務経験に基づいて知識やスキルを活用できます。サイエンス(Science、データと理論)は、データ分析と科学的な理論に基づくアプローチで、論理的かつ体系的に組織運営を最適化します。
この「アート」「クラフト」「サイエンス」のアプローチは、人を育てる研修の設計にも適用できると考えます。この記事では、このアプローチを英語研修に応用し、その効果にどのように影響を与えるかについて解説します。
目次
英語研修におけるアート(Art) – 創造性と直感
「アート」とは、創造性と感情を重視するアプローチです。
研修のデザインにおいては、学習者の感情を動かし、興味や好奇心を引き出します。特に社会人の研修プログラムでは、学習者と講師が共に興味を持てる教材を設計します。
例えば、ストーリーテリングやケーススタディを用いることで、受講者が主体的に参加できる環境を作り、学習者のモチベーションを高め、学習効果を向上させます。
アートの適用– アットイングリッシュでの例
アットイングリッシュでは、ビジネストピックのディスカッションやケーススタディを通じて、学習者が実際のビジネス環境でどのようにコミュニケーションを取るかを体験的に習得します。
さらに、ビジネス英語コミュニケーションだけでなく、社会人が自然と興味を持ち深く話し合える時事問題のディスカッションにも力を入れています。受講者は仕事とは直接関係のないトピックにも触れ、興味の幅を広げることができます。また、同じ時事問題について、北米や欧州出身の講師の視点と自分の視点を比較することで、新たな発見を得られます。
このアプローチは、受講者の想像力を刺激し、実践的なスキルを楽しく身につける助けとなります。また、好奇心と楽しさが学習のモチベーションを高め、自然とレッスンの継続を促進します。
失敗のリスクが高い英語研修に共通する4要因 – 研修担当者はどう事前対策をすべき?【TOEIC800点以上からの上級英会話・英語研修 アットイングリッシュ】
英語研修におけるクラフト(Craft) – 経験と実践
クラフトの適用– アットイングリッシュでの例
アットイングリッシュでは、ミーティングの参加・司会・ファシリテーション、プレゼンテーション、その他ビジネスでの英語コミュニケーション(スモールトークやアクティブリスニング等)など、シーンを設定した会話練習を行います。
さらに、豊富な社会経験を持つネイティブ講師による高品質な指導を提供しています。各レッスン後には、講師からの詳細なフィードバックを受け、受講者の発言や経験に基づいた具体的な表現についてアドバイスを行います。この個別対応のアプローチにより、受講者が自身のビジネス環境に適した英語スキルを習得します。
教材から知識やスキルを吸収し、それを講師とのインタラクティブで試し、講師からのフィードバックを得て改善して、更に実践で試すというサイクルで伸ばします。
英語研修におけるサイエンス(Science)- データと理論に基づくアプローチ
サイエンスの応用 – アットイングリッシュでの例
アットイングリッシュでは、ビジネス英語を、英会話スキルと英語コミュニケーションの二層構造で捉えています。英会話スキルを土台とし、上級者は、その上に英語コミュニケーション力を積み上げます。
土台となる英会話スキルは、正確さ・文章構造の複雑さ・内容・流暢さ・発音の5つに、英語コミュニケーションは、話の構成・ポイントの明確さ・情報量・好感を持たれる話し方という4つの領域に切り分け、それらを意識しながらトレーニングを行います。
英語研修設計では「アート」「クラフト」「サイエンス」のバランスが大切
概して、教育機関での教育プログラム設計のほとんどは、非常に科学的です。学習者はプログラムの中で秩序や公式を学び、応用し、予測に基づいて結果を求めるという、科学的な思考を身につけていきます。
しかし、実際のビジネスの現場では、何が機能し効果的かを分析し(サイエンス)、洞察や創造的なアイディア(アート)と実践による技術(クラフト)がソリューションに繋がります。
同様に、研修を通じてスキルを向上させる際にも、アート、クラフト、サイエンスの3つのアプローチが効果的です。
英語研修が、アート、クラフト、サイエンスのどれかに偏るとどうなる?
これら3つのアプローチですが、どれかに大きく偏りすぎると問題が起きます。
アートに偏る: 受講者に感動や面白さを感じさせるが、教育効果の低いプログラムになる
毎回、題材やアクティビティは面白いものの、レベルに合っていない、仕事に繋がる内容ではない、覚えるべきボキャブラリーや表現がないなど、面白さのみ重視の研修となってしまいます。
クラフトに偏る: 各自の性質や個人的な経験に依存する
研修内容が参加者や講師の特性・経験に依存するため、誰もが一定の成果を得ることが難しくなります。例えば、特定の参加者が得意とする手法やアプローチに基づいた研修は、その参加者には効果的かもしれませんが、他の参加者には必ずしも同じ効果をもたらさない可能性があります。
サイエンスに偏る: 教育効果は高いが、退屈で刺激のない研修になり、続かない
ボキャブラリーや表現の知識を増やすなど、数値で目に見える形の効果は期待できますが、単調で面白味に欠け、特に受験等をする訳ではないビジネスパーソンにとっては退屈に感じがちです。
逆に言えば、この3つのバランスの取れた研修は、効果的で、「面白い!」という感動に満ちた、受講者の経験に基づいてカスタマイズした研修ということが言えます。