ビジネス、経済、テクノロジー、文化、生活、法律など、時事問題から最近の生活情報まで、ネイティブ講師とオンラインで議論するアットイングリッシュの英会話レッスン。
今週からスタートするのは、「民法714条、責任無能力者の監督義務者等の責任を除外する6つの基準」の話題です。英語でディスカッションする際のポイントを幾つかご紹介いたします。ここでのディスカッションの組み立てや、使われる英語表現が、実際のビジネスでの会議でもお役に立てれば幸いです。
<この議論での英語表現>
ネイティブ英語でセンスよく表現!例文集1:監督義務者等の責任
ネイティブ英語でセンスよく表現!例文集2:監督義務者等の責任
【オンライン英会話での議論の概要と紹介】
認知症の人の介護をしている人にとっては、重要な判決が2016年3月1日に最高裁で下されました。
認知症で徘徊していた、91歳の男性が電車にはねられて亡くなった事件について、JR東海が家族に、振替輸送の費用として720万円の損害賠償を求めた訴訟で、一審判決と二審判決は、家族に賠償責任を認めていたものの、最高裁は「介護する家族に賠償責任があるかは生活状況などを総合的に考慮して決めるべきだ」とする、初めての判断を下し、家族に賠償責任は無し、としました。
そして、責任が生じるか(介護する家族が「監督義務者」にあたるか)について、最高裁は、以下6つの判断基準を示しています。
1. 介護者自身の生活、心身の状況
2. 親族関係の有無や濃淡
3. 同居の有無や日常的な接触の程度
4. 財産管理への関与の状況
5. 認知症の人の日常生活における問題行動の有無
6. 問題行動に対応するための介護などの実態
この件では、離れて暮らしていた男性の息子などが賠償責任を負わずに済んだという点では、ある意味、うなづける判決ですが、では逆に、事故による振替輸送の費用を鉄道会社が負担すべきなのかといえば、鉄道会社にもその責任は無いように思えます。
また、6つの基準を見ても、客観的な線引きができているようには見えず、つまり、ケース・バイ・ケースで、これらの事由を勘案します、といったレベルにも見えます。
海外でも、特に先進国では認知症の介護は、切実な話題です。
是非、英語で「法制度がどうあるべきか」をディスカッションしてみてください。
【オンライン英会話で行う議論の内容】
認知症を患う人が起こしてしまった他人への損害に対する賠償責任を、その家族が負うかどうかについて、最高裁判所が新しい判断基準を示しました。
民法714 条は、「責任無能力者の監督義務者等の責任」を定めており、従来は家族が賠償責任を負ってきましたが、その家族自体が高齢だったり、遠くに住んでいたりする場合など、除外される6つの基準が示されました。
今回は鉄道会社が事故を起こした認知症を患っていた人の遺族に賠償を求めていましたが、それができなくなります。法曹界でも、原告被害者(鉄道会社)の救済がされない点や、責任が生じるため、身近で親身な介護をしたがらない人がでてくるといった心配の声があがったり、高齢化社会が進むのだから、鉄道会社もフォームへの柵の設置など対策をとるべき、といった様々な意見が出ています。実際に親族の介護に関わっている人は増えており、今後も議論されるトピックとなりそうです。
【オンライン英会話での注意点と、学びのポイント】
まずは注意点からです。
【注意点1】発言する際、実際に苦労している人たちが居ることを忘れない(英語でも同じ)
認知症とその介護は、海外の先進国でも深刻な問題です。親族で認知症を患っている人がいたり、その介護をしている人は珍しくありません。議論のために意見を出すだけだと考えて、無神経な発言をしてしまうと、人間関係は容易に壊れます。
これはビジネスにおいても、全く同じです。認知症やその介護のように、ビジネスとは全く関係の無い話題であったとしても、人は誰しもビジネスの面以外のプライベートの面も有しており、そこで信頼できない人物と評価されれば、容易に人間関係は壊れ、もちろん、ビジネスにも影響を及ぼします。条件の変更で修復が効く、ビジネスの面よりも問題も影響も大きいかもしれません。
【注意点2】感情的な意見で終わらないようにする
遠くに住んでいた親族が責任を負わずに済んだことは、ある意味、胸をなで下ろす判決と言えるかもしれません。では、それでこういった問題は解決することになるのでしょうか。
ビジネスにおいても、同様の事象がよくあります。トラブルが発生したときに、個人が責任を問われずに済んで、胸をなで下すものの、実際にトラブルは発生しており、その責任はどこかが負うことになる。その部署かもしれないし、会社全体かもしれない。また、責任の所在が明瞭ではなかったとしても、トラブルに関連して費用は実際に発生していて、それを誰かが負担しなくてはいけない、といったケースです。
【学びのポイント1】まずは、良いことを発言する。誰かを攻撃することは避ける
英米文化圏では特にそうです。「良いことが言えないのであれば、黙っていなさい。」と教育される家庭すらあります。そういう意味では、特に英語で会話している際には、気をつけましょう。英語でのビジネス会議なら、尚のことです。
では、この件では、発言できる良いこととは、どういったもののでしょうか。
例えば、
「遠くで暮らす親族が責任を負わされることがなくて、安心しました。」
「裁判所が、状況に合せた合理的な判断を下すようになっていくことは良いことだと思います。」
といった内容です。基本的に、誰のことも攻撃していないですし、傷つけていません。どうしても、辛辣な発言をしたい場合には、まずは良いことを発言して、相手の反応、会議参加者の様子を確認してからにした方が安全です。
【学びのポイント2】「では、一体どうなるのか」を必ず考える(英語での議論、ビジネス会議でのディスカッションなら、この部分をメインに据えるべき)
この件で、「では、一体どうなるのか」を考えると、親族は責任を負わないわけですから、事故のために発生した費用は、訴訟の原告であるJRがそのまま負担することになるように見えます。公共交通機関として、電車を走らせていたところ、線路に侵入する人が居て、死亡事故が発生。電車を利用している人たちにかかる迷惑が最小限になるよう、振替輸送を実施し、その費用を請求したものの、それは支払われない。それで良いのでしょうか。
また、もう一点、「では、一体どうなるのか」を考えるべき点があります。それは、最高裁判所が示した基準は、どのくらい親族が認知症患者や、その介護、生活に関与しているかを検討する基準であり、「関与していないほど責任は無い」という結論を導き出します。逆に言えば、認知症患者の介護や生活に積極的に関与するほどに、事故の際の賠償責任を負うという理屈になりかねません。それで良いのでしょうか。
「では、一体どうなるのか」を考える。これは重要です。(ビジネスに関連して言えば、これこそが大切とも言えるのではないでしょうか。)
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【まとめと、論点】
1.最高裁が、民法714条「責任無能力者の監督義務者等の責任」について新しい見解を示した。
2.そこでは、責任が生じるか(介護する家族が「監督義務者」にあたるか)について、最高裁は、6つの判断基準を示した。
3.こういったトピックで議論する際の注意点。
(1)発言する際、実際に苦労している人たちが居ることを忘れない(英語でも同じ)
(2)感情的な意見で終わらないようにする。
4.まずは、良いことを発言する。誰かを攻撃することは避ける。特に欧米系の人たちと英語で議論するときにはマナーとして注意が必要。
5.「では、一体どうなるのか」を必ず考える。(英語での議論、ビジネス会議でのディスカッションなら、この部分をメインに据えるべき。)
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2016年12月17日編集