歴史的な為替環境の変動にも見舞われる中、企業では、国際的な感覚を持ち、海外の人たちと協力関係を作ったり、競争したりしながら、新しい技術も駆使して、ビジネス成果を作れる「グローバル人材」の育成が急務とされています。その育成方法と、デザインが容易で即効性のあるグローバル人材研修の企画について考えてみましょう。
目次
グローバル人材育成が急務となっている背景
背景には以下のような事情あります。
1.グローバル化の進展:多くの企業が海外市場に進出、異文化間でのビジネス運営能力が必要。
2.国内市場の縮小:日本の人口減少と市場の縮小により、海外市場への依存度が拡大。
3.技術革新とDX:デジタル化やAIなどの新技術導入が進む中、グローバルなビジネス展開には、技術スキルと国際的なビジネススキルを兼ね備えた人材が必要。
4.国際的な協力と競争:国際的な規制や環境基準への対応、多国籍企業との協業や競争など、ビジネスの場が国際的な舞台に移る中で、グローバルな視点を持った戦略的思考が求められます。
5.人材の多様性:異なるバックグラウンドを持つ人材を採用し活用することで、新しいアイデアや革新的な解決策が生まれやすくなります。
グローバル人材を定義する、2つの軸(1つは文部科学省の定義)
「グローバル人材」を育成しようとするとき、あなたの組織におけるその定義が決まっていないと、TOEICスコアで「英語の読み」と「英語の聞き取り」ができる程度の人を作るのに時間と労力とお金を費やし続けることになります。目指すべきグローバル人材の像を具体的に定義することが、資源の無駄遣いを避ける上でも、望む成果を効率的かつ効果的に生み出すためにも不可欠です。次に例として、具体的に2つの「グローバル人材の定義」をご紹介させていただきます。
文部科学省「産学連携によるグローバル人材育成推進会」の定義
この定義について、様々な企業研修で引用される文部科学省の定義は以下の通りです。
「世界的な競争と共生が進む現代社会において、日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間。」
そして、この「グローバル人材」の概念を整理すると、概ね、以下のような要素となるとしています。
要素Ⅰ: 語学力・コミュニケーション能力
要素Ⅱ: 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
要素Ⅲ: 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー
参考:グローバル人材の育成について|文部科学省
非常に参考になります。
自社独自の「グローバル人材」の定義
とはいえ、自社の事業内容や戦略、目指す市場に特化したスキルや知識が求められるため、それに適したグローバル人材の定義を自社で設定することも良いと思います。
弊社で言うと、非常にシンプルです。以下、5点のコンピテンシー、スキルを持つ者です。
Leadership(リーダーシップ。他人も巻き込んでの効果の最大化)
Diversity & Inclusion(ダイバーシティ&インクルージョン)
Goal Oriented mindset(成果をきちんと追い求める、目標指向性)
Compliance(異なる法体系の環境でも、法令順守)
Proficiency in English communication(熟達した英語コミュニケーション力)
簡単なものでも構わないので、自社のニーズを考慮したものを作ると会社にとっても、従業員にとっても、モチベーションは上がると思います。
グローバル人材育成の方法、グローバル人材育成研修の作り方。英語研修とグローバル人材育成
基本的には、ここまでに出てきた要素を研修で磨いていきます。
要素Ⅰ: 語学力・コミュニケーション能力
要素Ⅱ: 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
要素Ⅲ: 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー
従来型のグローバル人材育成の研修
それぞれの要素について、研修サービス会社がありますので、良い研修企業、良いサービスを選んで研修を企画していくのがこれまでの従来型の研修だと思います。
なぜ、主体性や積極性といった要素が必要なのかを考えさせ、どのような行動をとるべきなのかを話し合ったりすることと思います。
ただし、要素のⅠ、Ⅱを見ると、語学力以外はグローバル人材でなく、国内で活躍してもらいたい人たちにも必要なものです。要素Ⅲは、ある意味、自分自身が海外へ出てみて、多様な人々とコミュニケーションをとりながら、自分の中で形成していくものなのかもしれません。
逆算して、英語コミュニケーション型グローバル人材研修で「直接的な変化」を促す
ここまで来て気づくのが、結局、語学力、コミュニケーション力の要素が無いと、他の要素(主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感、異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー)を海外関連事業で活かすことができない、ということです。
他の要素について知識としては持っていても、“人”に対して行使できなければ意味はないですし、その際、語学力、コミュニケーション力が必要となるからです。
そこで逆に、英語コミュニケーションから入って、各要素ごとに「どのような状況で」「何を伝えるか」を英語コミュニケーションとして練習し、どのようにそれらの要素が発揮されるのかをスキルとして身につけてはいかがでしょうか。
例えば、主体性、積極性の要素を英語コミュニケーション型グローバル人材研修から身につける
主体性や積極性は、グローバル人材でなくとも重要な要素です。新入社員研修でもテーマに採り上げられるかもしれません。では、それをどのように「英語コミュニケーション型グローバル人材研修」にはめ込むのでしょうか。
例えば、以下のような設定を考えてみましょう。
「どのような状況で」:販売不振の海外現地法人に対して、販売促進をうながしたい
「何を伝えるか」:海外現地法人の社員たちの努力も認めつつ、自分も加わることで、状況を好転させることに本気で取り組むことを伝えたい。海外現地法人の社員たちにも奮起して欲しい。
主体性、積極性を醸し出す、英語コメント例(相手の努力を認めながら)
Thank you all for joining today. I want to start by acknowledging the hard work and dedication each of you has shown, especially during these challenging times. I know things have been tough, and our sales numbers aren’t where we want them to be.
本日はお集まりいただきありがとうございます。まずは、特にこの厳しい時期に、皆さん一人ひとりが見せてくれた努力と献身を称えたいと思います。厳しい状況が続いていることは承知していますし、販売台数も思うように伸びていません。
I am here today not just to discuss these challenges but to take an active role in our efforts to overcome them. Together, I believe we can turn things around. I am committed to being directly involved and will work closely with each of you to understand the specific issues we face and to identify the best ways forward.
私が今日ここにいるのは、こうした課題について話し合うためだけでなく、それを克服するための取り組みに積極的に参加するためでもあります。共に力を合わせれば、状況を好転させることができると信じています。私は直接的に関与し、私たちが直面している具体的な問題を理解し、最善の方法を見出すために、皆さん一人ひとりと緊密に協力することを約束します。
ダイバーシティとインクルージョンを醸し出す、英語コメント例
We’ve noticed some misunderstandings and friction, which is not uncommon when diverse teams with different roles and expectations collaborate. However, it is crucial that we see these moments as opportunities to enhance our teamwork and learn from each other.
役割も期待も異なる多様なチームが協働する際には、誤解や摩擦が生じることも珍しくありません。しかし、このような瞬間をチームワークを高め、互いに学び合う機会と捉えることが重要です。
Let’s make a commitment today to promote open communication and mutual respect. I urge everyone to share their thoughts openly and to listen to others with the intent to understand, not to respond. By doing so, we can overcome these challenges and strengthen our team unity.
今日は、オープンなコミュニケーションと相互尊重を促進することを約束しましょう。皆さんには、自分の考えを率直に分かち合い、反応するのではなく、理解するつもりで相手の話に耳を傾けることを強く求めます。そうすることで、私たちはこれらの課題を克服し、チームの結束を強めることができるのです。
Thank you for your hard work and commitment to a positive workplace. Let’s focus on moving forward together with a spirit of cooperation and inclusion.
皆さんの努力と前向きな職場に対するコミットメントに感謝します。協力と包摂の精神をもって、共に前進することに集中しましょう。
英語コミュニケーション型グローバル人材研修の最大のメリット
最大のメリットは、やはり、何を言えばイイかがわかっていることです。
言葉をまるごと憶えてしまい、それによって、グローバル人材が求めらえる要件を取り込んでいく、というものになります。
まとめ
これから増々、需要が高まる「グローバル人材」。自社での育成を考えたときに、背景、定義を考えながら、是非、自社の実情に合った研修を実施されてください。